第7章 ものには、それが収まるべき場所がある
この章には何が書かれているのか
rashita.icon序盤は、情報整理の歴史として読める
1800年代にはすでに情報が多すぎることが問題になっていた(それが加速していく)
電話がビジネスに与えた影響
なかったときはすべての部署が同じ建物で仕事をする
効率的だが小規模に留まった
電話によって、部署ごとに場所が違ってもよくなった
rashita.iconコンテナの発明や、インターネットの普及に通じる話
必然的に直接的でない情報のやり取りの必要性が高まる
プレスブック
複写を作る。
日付順で保存される
問題点
特定の文書を探すのが難しい
保存はいいが、検索が難点
文章を組織的に管理する必要性が増大した
ウートン特許の机
章題の「ものには、それが収まるべき場所がある」が謳い文句だった
60やら100もの引き出しがある。
それで区別は可能になったが、ある資料をどこにいてたのかを覚えておけない
カテゴリーは作れるが、組織的に管理する構造化の手助けはない
カテゴリーをまとめることも、探し出す手助けもない
このアプローチには限界があった。
縦型ファイルキャビネット
20世紀初頭に導入
大量の資料を効果的にうまく構造化することで組織的に整理することができた
rashita.iconこの「組織的な整理」とは具体的に何を意味するのだろうか
立てて並べることで、素早いサーチが可能になった
ラベルがついた仕切り紙を使ってファイルを分類するやり方が効果的だった
日付 or アルファベット順
階層的なラベルづけが可能
業務ごとのファイルキャビネット(群) (キャビネットそのものということ)
キャビネットの各引き出しにラベル
引き出しの中に、ラベルのついた仕切り紙
ラベルのついたフォルダ
最終的には、手順を定めておくことによって初めて体系的に分類整理することが可能になる
rashita.iconこの点が問題になる場合がある。手順を覚えておけない、というような。
複写の一般化、紙サイズの標準化、ファイリング手法の教育などは必要であったが、それでもファイルキャビネットは強力な認知のアーティファクトだった(ファイリング・システム)。 rashita.iconウートンの特許机では、引き出しにさまざまなサイズがあった。ファイルキャビネットは、標準化されたフォルダーに処理をまとめなければいけない、という制約がある。
整理における規格化の要請
情報量が多いと破綻するが、一つの小部屋で蓄積される程度の量であれば、めざましい効用を提供してくれる
rashita.iconGoogleは一つの小部屋には収まり切らない情報を扱う装置だろう。では、私たちが一般的に使う「情報」はどうだろうか。どのサイズ感だろうか。
クリス(仮名)の整理法
https://gyazo.com/9fc705fdc8c7cee397ab6264c42c9934
書類整理は三階層のファイリング体系
机は作業スペース(定期的に片づけたくなる)
予定表のある机には、よく使うものが置いてある(筆記用具や文房具、辞書など)
ファイルキャビネットの壁面には、自分の住所が印刷してあるシールや、領収書を入れる袋もある
空のフォルダーも準備されている
机の6つの引き出し
封筒・メモ用紙
食べ物と薬
財務関係書類・お祝いカード・手紙・メモ帳
事務用品
普段あまり使わないもの(名刺、ラベル、マーカーなど)
雑多なファイル
「すること」リスト側の机
講義用のスライドが入ったルーズリーフ
新品のOHPシート
電話帳やマニュアル
インボックス用の数段重ねの箱(ただしインボックスとしては使っていない)
電話番号表
ちょっとしたコピー
受信ファックス
お達しお類い
アウトボックス
発送する文書
ファイルキャビネット
机の左のキャビネット
かつては書きかけの論文などが入っていた。
机の右のキャビネット
A.自分の論文が年代順に並んでいる
B.自分の学会で今使っているファイル
これとは別に、学会の古いファイルや、研究の過程で作成したファイルの引き出しもある
これらは、三〜四ヶ月に一回覗くくらい
処理中の文書を扱うのに有効
引き出しは忘れるし、机の上はそこまで広くないので邪魔になる
ポストイットで棚にラベル付けを行っている
「すること」リストは、新しくするときに分類をし直すため
本棚は5つ
論文や学会誌
「いつか読もう」も入っている
アイデアを走り書きしたり、一覧表を作ったり
いくつかは書いたままになっている
ドアの脇
ときどきみてあたためているアイデアを考え吟味する
上記の例は、認知のアーティファクトが、知的専門家の仕事につきまとう整理分類という問題を軽減しているのを示している
rashita.icon整理分類というのは「問題」なわけだ
ポストイットは、ここ10年で最も重要な認知のアーティファクトである 二種類の収納キャビネットの使い分け
効率的な整理分類のためにファイル・キャビネット
頻繁には見ないもの
深い階層で十分な分類
効率的な検索のためにパイル・キャビネット
よく使うもの
浅い階層(というか平坦な構造)
すぐに取り出せるが、分類は弱い
効率のためだけでなく、動機づけの構造もある
終わったポストイットを捨てないで、「終わったもの」領域に貼り替える、など
知識の分類整理について
辞書はアルファベット順になっている
30万種の品物を扱うマガキンズ金物店は、アルファベット順ではなく目的ごとによって階層的に整理されている
rashita.icon階層的とは、お店全体が区画によって整理され、その区画もまたより細かい区画によって整理される、という意味
それぞれの区画には、専門知識を持った担当者がいる
自分の担当でお客の問題解決ができるならそれでよし、そうでない場合は問題を担えそうな区画へお客を誘導する
お客は、お店全体の構造を知る必要はない
何かの場所を覚えれば、それと似た用途のものは近くに並んでいるとわかる
新しいものを探すときは、店員に聞けば案内してもらえる
このお店での店員は、知的エージェントのような役割を担っている
二重の知識構造
自分の専門分野に関する知識
自分の専門分野外の担当者に誘導するための知識
rashita.icon専門の担当者とその緩やかな連携は、いわゆるスケールフリーのネットワークに近いものを
rashita.iconまたこの点がいわゆるオブジェクト指向が見落としている点ではないかとも感じる。 担当者=エージェント=オブジェクトは、自分の担当のことは知っているが、他のことは知らない
ただ、知らないにしても、おおまかなあたりをつけて、他の担当者=エージェント=オブジェクトに誘導することができる。自分の領域から少し「はみ出した」知識もまた持っている。
これをデータ形式の中で、どう表現するか。あるいは、既存の作法とのぶつかりがないか。
辞書は、知的エージェントがいないときに分類整理をどうするかが重要で、だからアルファベット順が妥協として使われている
私たちには、知的エージェントが必要で、それはさまざまな辞書、スペルチェッカーなどが一体化しているものになる
rashita.iconGoogleよりも、ChatGPTがその役割に近いことをこなしてくれる
電子メディアが印刷物より優れたものになりうるのは、コンピュータに助けられた検索があるから
コンピュータに助けられた検索なら、印刷メディアの限界を超えられるから
rashita.icon逆に言えば、「検索」以外の用途であれば印刷物はまた違った特性を発揮できるはず
大量の電子情報をどう扱うか、の一つのアイデア
ナビゲーション(航海)という考え方
人間の空間把握能力を使う
空間的な情報分類がうまくいく条件
ものと位置との自然なマッピング
最少の手順で、目的のものが探しだせる
一つの位置にあるものの種類は、容易に見つけ出せるくらいに小さな数
検索作業はきわめて少なく
上記がなりたつのは
よく使う情報で、比較的小規模
対象にはっきりとした構造がある
使い道によって置く場所を決められる
ただし、これが使えるのは対象の空間をよく把握している人だけに限る
旧来の分類整理の考え方の問題点
置き場所が一つに定まるという考え方は無理がある
構造が後から変わってしまうことが考慮されていない
ナビゲーション問題
こういう問題が「ナビゲーション問題」と呼ばれていることが問題
空間的メタファーの前提が入ってしまっている
著者は、記述によるナビゲーションを提唱する
心の中に記述する→それが出てくる
一度で見つからなくても、記述を修正していけばいい
rashita.iconそのままChatGPTの話
電子図書館
新しい情報はまったく加わらなくても、これまで遂行できなかったタスクが完了できるようになった
電子メディアは「使いやすい」というアフォーダンスを持つ
"知識は力"だから、使いやすくなれば嬉しい
その反面、市民にとってよくない使い方がなされるかもしれない
rashita.icon情報資本主義
社会はメリットを追求するために、プライバシーの犠牲というコストとを受け入れるか?
rashita.icon著者がこの問いを発してから年月が経ったが、社会は受け入れたように思う。
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